【相続診断士で行政書士が考え教える生前対策が必要な理由】

相続診断士で行政書士の岸田です。

今回は私の経験した相続争いから生前に対策すべき人を検討してみました。

相続診断士とは、相続に関する基本的な知識を持ち、

円満な相続の実現をサポートする専門資格です。

主に、相続に関する悩みや問題を抱える方に対して、

適切なアドバイスを行い、スムーズな相続手続きをサポートする役割を担います。

自身の経験から、争いのない相続の実現を目指し、相続診断士の資格を取りました。

毎月の定例会に出席すると、同じような経験を持つ人たちが

様々な業界から集まります。

相続診断士は、弁護士や税理士のように

直接的な法律・税務業務を行うことはできませんが、

相続に関する全体的な流れを把握し、専門家への橋渡しをすることで、

相続トラブルの未然防止や円滑な資産継承をサポートします。

そのため、金融機関や不動産業、保険業界などで活躍する人が多く、

相続に関連する業務に携わる人にとって有益な資格とされています。

「相続トラブルを未然に防ぐ」ことを目指し、

日々の情報収集と発信を心がけています。

相続争いの件数の推移

日本における相続争いの件数は、

家庭裁判所が取り扱う遺産分割事件数として把握されています。

近年、この件数は増加傾向にあります。

例えば、平成12年(2000年)には8,889件だった遺産分割事件数が、令和5年(2023年)には13,872件に増加しています。

最高裁判所 司法統計より作成

このように、相続争いの件数は年々増加しており、

相続に関するトラブルが増えていることが伺えます。

遺産額の統計

日本における相続争いの遺産額に関する統計データは、

家庭裁判所が取り扱う遺産分割事件の情報として公開されています。

このデータは令和4年(2022年)のものです。

令和4年の司法統計によると、家庭裁判所で扱われた遺産分割事件のうち

、遺産の価額別の内訳は以下のとおりです。

最高裁判所 司法統計より作成

このデータから、遺産分割事件の約70%が遺産額5,000万円以下のケース

であることがわかります。

特に、1,000万円超~5,000万円以下の範囲が約30%と最も多くなっています。

これらの統計は、裁判所が公表している

「司法統計年報 家事事件編」012659.pdfに基づいています。

詳細なデータをご覧になりたい場合は、裁判所の公式サイトをご参照ください。

これらのデータから言えることは「普通の家族が相続でもめている」

ということです。

相続争いの原因

日本における相続争い(遺産トラブル)が発生する主な原因は、

以下のようなものがあります。

  • 相続財産が不動産のみ
  • 子供がいない夫婦
  • 介護をめぐるトラブル
  • 認知症により遺産分割協議が進まない
  • 隠し子がいるトラブル
  • 離婚をしていて前夫と前妻に子供がいる場合
  • 生前贈与をめぐるトラブル
  • 負債があることによりトラブル
  • 相続人が行方不明により相続手続きを進められない
  • 相続人が誰もいない

場合にわけてみてみましょう

【遺産の分け方に対する不満】

相続財産が不動産のみ

預貯金がほとんどなく相続財産が自宅のみだった場合

相続人が1人であれば問題はないのですが

兄弟で不動産を分けようにもできません。

不動産を共有名義にする方法はありますがその不動産に対して

何かをするたびに共有する人同士で合意する必要があり

管理についても面倒なことが多々起こりえます。

私は不動産を共有名義にすることはお勧めしません。

2次相続時には相続人が増えていき

益々問題だらけの不動産になる可能性が大きいからです。

子供がいない夫婦

子供のいない夫婦で相続が起こると、図のように配偶者兄弟姉妹が相続人となります。

もし配偶者と弟、妹とが常日ごろから良好な関係が築けているのであれば

問題はないかもしれません。

しかしそうではないのであれば、配偶者にとっては

長年連れ添った夫と築いた財産を

疎遠にしていた弟、妹と分け合わなければいけないとなると

納得のいくことでしょうか?

介護をめぐるトラブル

この図のように、義父の介護を長年担ってきた妻の苦労を知っている

長男は介護に費やした分を多くもらいたいと思うでしょう。

この場合の長男の妻は特別寄与者と言います。

特別寄与料をもらうことはできますが、これも特別寄与者と相続人との話し合いにより決まります。

スムーズな話し合いになることはあまり想像できません。

弟や妹が等分にもらう権利を主張すればもめごとに発展します。

民法900条に法定相続分の条文があります。

図のように兄弟のみが相続人の場合は、それぞれ1/3ずつ受け取ることになります。

実はその他にも民法では財産の分け方についての条文があります。

民法906条(遺産の分割の基準)

遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

きしださん

それぞれの事情により遺産分割することも法律に定められています。

認知した子がいる場合

図のような場合、配偶者とその子供たち、認知された子も相続人となります。

誰が見ても遺産分割協議が円満に整うと思えません。

離婚した前妻との間に子がいて、配偶者との間にも子がいる場合

図のような関係性の場合、配偶者や子は

前妻の子と遺産分割協議をしなければなりません。

配偶者にとって、精神的な負担になることは誰の目にも明らかでしょう。

生前贈与をめぐるトラブル

図のような場合に、兄としては兄弟で遺産を均等に1/3ずつ分けることは

納得しかねる場合があるでしょう。

特別受益と言って生前に援助をしてもらった贈与分を差し引いて

遺産分割協議を行うことになります。

弟や妹が生前贈与は過去のことだと突っぱねると遺産分割協議は整いません。

遺産分割協議が進まないことによるトラブル

相続人が認知症

図のように配偶者が認知症になった場合、

遺産分割協議がそもそもできない事態になります。

昨今の日本に認知症の問題は避けては通れません。

認知症になってしまうと、成年後見制度を利用し後見人が配偶者に代わって

遺産分割協議に参加します。

成年後見はやわかり|厚生労働省

後見人は被後見人の財産を守る立場なので

協議によって柔軟な遺産の配分は行われず法定相続分は必ず配偶者が

受け取るようになります。

その後の二次相続を考えると、必ずしも法定相続分での遺産分割が良いとは

限りません。

また、成年後見制度は現在のところ一度利用すると

亡くなるまで後見が継続されます。

その間、後見人への報酬の支払いが発生します。(専門家後見の場合)

これらのことを考慮すると認知症対策は必ず必要となるでしょう。

Danger

※専門家が後見人となる割合は8割以上です。

相続人が行方不明

図のように相続人の1人が行方不明だと遺産分割協議に時間がかかります。

相続人に行方不明者がいる場合は裁判所へ

不在者財産管理人選任の申し立てを行います。

不在者財産管理人が選任されると選任された財産管理人と

他の相続人との間で遺産分割協議を行います。

不在者財産管理人は不在者の法定相続分を侵害されないようにしますので

柔軟な遺産分割協議ができるとは言い難い状況になります。

相続トラブルを回避するための遺言作成

これまで見てきた相続に関するトラブルになりがちなケースでは

被相続人が生前に遺言書を作成しておくことで

トラブルを回避することができます。

遺言書の作成が必要なケース

  • 子供いない夫婦(お互いに遺言書を作成する)
  • 離婚歴があり前婚に子をもうけた人
  • 相続人に判断能力のない人がいる場合(認知症、障害者)
  • 認知した子がいる場合
  • 相続人以外に遺産を残したい人(介護でお世話になった人へ等)
  • 相続財産が不動産のみ
  • 生前贈与で多額の援助を行った人など

遺言書を作成する前にしておくべきこと

遺言書を作成する前にするべきことがあります。

  • 相続人の確定
  • 財産の確定

相続人の確定

戸籍謄本を集める必要があります。

ご本人、配偶者、子、場合によってはご両親、ご兄弟、甥や姪まで

これらの人たちのどの戸籍謄本が必要かはケースバイケースなので

一概に「これだけあれば大丈夫」とは言い難いのです。

きしださん

その判断を専門家へ任せてみるのも一つの選択肢です。

財産の確定

預貯金、証券、不動産、高価な絵画や骨とう品、車、最近は仮想通貨など

国内も海外もすべてを調査します。

そしてこれらを「誰に」「何を」「いくら」渡すのかを決めていきます。

遺言書の良いところは、「誰に」「何を」「いくら」渡すのか?

だけではなく、最後のメッセージを残すこともできます。

付言事項と言いますが、「なぜこのような分割方法にしたのか」

「家族への感謝の気持ち」残された家族へこれからの希望」などを

残すことで、相続人の気持ちをほぐしたり争いを回避する効果が得られます。

きしださん

ぜひ遺言書を作成することを検討してみてください。

【まとめ】

相続争いは、遺産の多寡にかかわらず発生する可能性があります。

特に、相続人の感情的な対立権利の主張が原因となることが多いです。

これを防ぐためには、
生前に遺言書を作成する
相続財産を整理し、相続人に分かりやすく伝えておく
家族で相続について話し合う機会を持つ
専門家(弁護士・税理士・相続診断士など)に相談する

といった準備が重要です。

きしだ行政書士事務所では生前対策のご相談を受け付けしています。

ご相談は無料です。こちらからお問合せください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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