【森林を相続したら?森林相続をスムーズに:手続きと注意点】

神戸三宮のきしだ行政書士事務所です。

相続診断士の行政書士が相続を専門に情報発信しています。

今回は、相続財産に「森林」があった場合の手続について解説します。

先日、相続したくないものランキング1位は「山」「田・畑」でした。

日本の国土の約66%が森林で覆われています。

これは先進国の中でも特に高い割合で、世界的に見ても森林の多い国の一つです。

この高い森林率の背景には、日本の山がちで急峻な地形や、

戦後に植林された人工林の存在などがあります。

しかし、林業の衰退や管理不足により、荒廃する森林も増えているのが課題となっています。

令和2年 国土交通省「土地利用現況把握調査」をもとに作成

兵庫県の森林率は約67%です。これは日本全体の森林率(約66%)とほぼ同じで、

県土の大部分が森林に覆われています。

特に、六甲山地や丹波地域、播磨地域などに広がる森林が多く、

人工林と天然林が混在しています。

森林は水源の涵養(かんよう)、災害防止や生態系の維持に重要な役割を果たしていますが、

林業の衰退による管理不足などが課題となっています。

《森林の所有者割合は?》

日本の森林の所有者別割合は、以下のようになっています。

  • 国有林(国の所有):約31%
  • 私有林(個人・企業・団体などの所有):約57%
  • 公有林(都道府県・市町村などの所有):約12%

私有林が最も多く、全体の約6割を占めています。

林野庁 森の整備と保全より抜粋

特に山間部の集落では、代々受け継がれた森林を所有する個人や

地元の林業関係者が多いです。

一方、国有林は主に環境保全や水源の管理を目的とし、林野庁が管理しています。

公有林は地方自治体が管理し、市民の憩いの場や防災機能を持つ森林として

活用されることが多いです。

【森林と農地の違い】

森林と農地の違いは、主に目的・利用方法・植生の特徴によって分類されます。

1. 目的の違い

  • 森林:木を育てて木材を生産したり、生態系を保護したり、水源を守るなどの役割を持つ。
  • 農地:作物を育てたり、畜産を行うための土地。食料生産が主な目的。

森林化を防ぐ役割を持つ

2. 利用方法の違い

  • 森林:木を伐採して利用することはあるが、基本的には長期的に維持される。間伐などの管理が必要。
  • 農地:毎年、耕作や収穫を行い、土壌の管理や肥料の施用が必要。

3. 植生の違い

  • 森林:スギやヒノキなどの人工林、またはブナ・ナラなどの天然林が生育する。
  • 農地:稲や小麦、野菜、果樹など人間が植えた作物が育つ。

4. 法律上の違い(日本の場合

  • 森林は「森林法」によって管理され、無許可で開発できない地域も多い。
  • 農地は「農地法」によって保護され、転用(他の用途に変えること)には許可が必要。

まとめ

森林は自然を守る・木材を育てるための土地、

農地は食べ物を育てるための土地という違いがあります。

それぞれの土地は適切に管理され、持続可能な利用が求められています。

農地は放っておくと森林化してしまいます。

森林化を防ぐためにも作物を育て続け、管理し続けることが必要です。

森林を相続した場合、以下のような手続きが必要になります。

森林特有の相続手続き

 森林の相続届出(森林法第10条の7の2)

  • 市町村の役所に「森林の土地の所有者届出」を提出する。
    • 期限相続開始から90日以内(遺産分割協議完了を問わず)
    • 対象:地域森林計画の対象となっている森林(山林)
    • 提出先:森林がある市町村役場の林務担当課
    • 必要書類:森林の位置を示す図面、登記事項証明書等権利取得が分かつ書類

下図参照

森林の土地の所有者届出制度 市町村事務処理マニュアルより抜粋

その他の注意点

上記の届け出を怠ると・・・10万円以下の過料(森林法213条)

林野庁森林整備部計画課

森林の土地の所有者届出制度 市町村事務処理マニュアルより抜粋

管理が難しい場合:森林を管理するのが困難な場合、自治体や林業組合と相談して

「森林経営管理制度」などを活用できる。

森林の整備・保全より抜粋

  • 売却や寄付:相続後に利用予定がない場合、他人に売却したり、自治体・NPOへ寄付することも可能。
  • 補助金や助成制度:自治体によっては、森林整備に関する補助金がある場合もあるので、確認するとよい。

林野庁森林整備部計画課資料よりindex-4.pdf

【森林の場所の調査方法】

森林の場所を調査する方法はいくつかあります。

以下の方法を組み合わせると、より正確な情報を得ることができます。

1. 登記情報、公図を調べる(法務局)

方法:法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」や「地図(公図)」を取得する
確認できる内容:森林の所在地、地番、所有者情報、面積、地目(山林など)

2. 固定資産税の課税情報を確認(市町村役場)

方法:市町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」や「固定資産税課税台帳」を確認
確認できる内容:所有している森林の一覧、固定資産評価額、課税地番
費用:無料~数百円(自治体による)

📌 ポイント

  • 森林の固定資産税を支払っているなら、市町村で情報が管理されている
  • 役場で「自分の所有する森林を調べたい」と相談すれば教えてもらえる

3. 地理院地図や農地ナビ、Web地図サービスを利用

方法:国土地理院の「地理院地図」や農地ナビ、Googleマップで確認
確認できる内容:地形、標高、土地利用状況など
無料で利用可能

📌 おすすめツール

4. 市町村の「森林計画図」を確認(市町村の林務担当窓口)

方法:市町村の林務課・農林課で「森林計画図」を閲覧、兵庫県はこちら兵庫県/森林情報の閲覧・交付について
確認できる内容:森林の用途(保安林・人工林・天然林など)、所有区分
費用:閲覧無料(コピー代は有料のことも)

📌 ポイント

  • 森林の保全状況や利用規制がわかる
  • 保安林(伐採制限のある森林)の指定状況もチェックできる

5. 現地調査(実際に訪れる)

方法:GPSアプリを使って現地を確認
必要なもの:登記情報、地図、コンパス、長靴、スマホ(GPSアプリ)
無料(ただし、測量が必要なら業者に依頼)

📌 ポイント

  • 最終的には現地調査は必要です。
  • 所有地の境界が曖昧な場合、隣接地の所有者と話し合うのが重要
  • 境界が不明な場合は、土地家屋調査士に依頼して「境界確定測量」を行う

6. 専門家に依頼(必要に応じて)

方法:土地家屋調査士や森林組合に相談
確認できる内容:正確な境界、測量結果、土地の評価
費用:測量費用は数十万円~(面積や状況による)

📌 ポイント

  • 隣地との境界トラブルを防ぐために、測量を依頼するのも選択肢の一つ
  • 森林組合に相談すると、森林の活用方法もアドバイスしてもらえる

まとめ

🔍 まずは法務局や市町村役場で登記情報を確認
🗺 地理院地図やGoogleマップで場所を特定
🌲 現地調査を行い、必要なら専門家に依頼

いずれにせよ、ケースによりけりなのでまずはご相談ください。

特に、「森林の位置がわからない」「境界が不明」という場合は、

市町村役場や森林組合に相談するとスムーズです。

きしださん

森林なのに登記上の地目が「農地(田・畑)」になっている場合、

そのままでは森林として適切に管理できないため、

地目変更登記の手続きを行うのが一般的です。

【原野商法とは?】

原野商法(げんやしょうほう)とは、価値の低い土地(山林・原野など)を

「将来値上がりする」「別荘地やリゾート開発予定がある」などの理由付けで 山を売買する商法のことです。

1970~1980年代に多発し、多くの人が被害に遭いましたが、

現在も形を変えて続いています。

最近は、この原野商法で山を購入した方の相続案件が増えてきています。

実際に別荘地を購入されていると、その別荘地の管理者がいる場合もありますので

場合によってはスムーズに手放すことができます。(すべてではありません)

またこのような山に対し買い取り業者が出てきています。

実際にこの買い取り業者が希望通りに移転登記を行ってくれるとよいのですが

適切な手続きを踏まないまま、費用だけ受取り連絡がつかなくなる場合も

ありますので注意が必要です。

国土交通省も注視しています。

国土交通省より抜粋

【まとめ】

森林を相続した時には、森林相続の届け出が必要になります。

この届出に該当する森林の場所を示す書類等が必要となります。

長年管理されておらず、親からの相続により

その森林の場所も明らかでない場合には

場所を特定する調査が必要となり、一般的には難しくなるでしょう。

きしだ行政書士事務所では相続のお手続きに関するご相談を

無料で行っております。

ご相談はこちらからお願いいたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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