【知って安心、書いて安心な遺言書のススメ~正しい知識で正しい終活~】

神戸市で生前対策から死後事務までをサポートしております「きしだ行政書士事務所」の情報室です。

今回は遺言書の正しい知識についてまとめてみました。

遺言書と聞くとたいていの人は「うちにそんな財産はないからいらない」と言われます。
しかし、遺言書を書いておくことが必要な人は意外にも多くおられると思います。

そんな必要な人に遺言書の大切さ、準備の大切さを知っていただきたく思います。

【遺言書が必要は人とは?】

まず遺言書が必要な人とはどのような人でしょうか?

私が考える「遺言書が必要な人」とは次のような人を言います。

  • おひとり様
  • お子様のいないご夫婦
  • 事実婚の人
  • 障害を持つお子様のいるご夫婦
  • 相続財産が不動産に偏っている人

まず、おひとり様の理由ですが結婚しておらず兄弟姉妹がいる場合は法定相続人に兄弟姉妹が該当します。
ある程度高齢になって亡くなる場合、その兄弟姉妹も同じく高齢であることのほうが多く、高齢の兄弟姉妹が相続手続をすることになるため負担が大きくなります。
また、兄弟姉妹も亡くなっている場合も少なくなく、この場合甥や姪が代襲相続人となるため、あまり顔を合わす機会の少なかった甥や姪同士で遺産分割協議をすることとなり、連絡を取ることすら難しくなる場合もあるでしょう。

そこで遺言書があれば法定相続人の署名や実印の押印を省くことができ相続手続を簡略化できます。

お子様のいないご夫婦についてですが、お子様のいないご夫婦は法定相続人に兄弟姉妹がなる場合が多くなりおひとり様同様の理由から必要と考えます。

事実婚についてですが近年は自治体によってパートナーシップ制度が設けられている場所もあり、入院の手続き等は家族として扱われることもあります。

しかし、あくまでも自治体が認めているだけであり民法が改正されたわけではありません。
事実婚の場合は配偶者として扱われることはないため相続権がありません。
事実婚のまま長年連れ添ったパートナーがもし亡くなっても相続できず悲しい思いをするかもしれません。
遺言書を準備しておくことで残したい人へ財産を残すことができます。
遺言書には法定相続人以外の人にも財産を残すよう書くことが可能です。

障害を持つお子様のいるご夫婦についてですが障害を持つお子様の判断能力が低いかあるいは無い場合、誰かが代理して遺産分割協議をする必要があります。
日常の事だと親が代理してあげることが可能なことも多くありますが、遺産分割協議となると状況によって利益相反関係となり家庭裁判所において多くの場合、後見をつけることを指示されることになるでしょう。
後見がつくことで遺産分割協議において法定相続分を守らなければならないという融通の利かない協議結果となることも多いと思います。
障害をお持ちのお子様が将来財産管理で困らないようにしたいと思ってもその対策が柔軟に行われない可能性も多くあります。
それでは安心できないですよね。

相続財産が不動産に偏っている人についてですが、遺産のほとんどが不動産の場合(遺産の額にかかわらず)法定相続人が複数いれば遺産を分けるといっても、不動産ですから共有となるでしょう。
私は不動産の共有はお勧めしませんので(管理の面で大変になります)持ち分を代償分割する(持ち分を金銭で渡す等)となるとその原資が必要になります。
仮に3,000万円の不動産をお持ちで3人で分けるとなると誰か1人の名義に変更し、他2人分計2,000万円を現金で準備する必要があるわけです。

いかがでしょうか?
準備する大切さは具体的に想像することで理解できるのではないでしょうか?

【遺言書とは】

遺言書とは、亡くなる前に自分の死後、財産や身分に関する最終の意思表示を決められた方式で書面に残すことです。

死後に一定の効果を発揮させるため法律で定められた方式で書面に残すことが重要となります。

原則何を書いてもよいのですが、法的に効力を発生されられる項目が決まっています。
多くの場合財産の処分についての指示を書き残します。(○○銀行▲支店の普通預金については誰に相続させる等)
つまり誰に何をいくら残すのかを書くことができます。
財産の処分以外にも子供の認知といういわゆる身分行為も遺言で可能です。

【遺言書の種類】

遺言書にはいくつかの種類がありますが、
これから遺言書を書こうと検討中の方へ私がおすすめしたい遺言書の種類は2つです。

  • 公正証書遺言
  • 自筆証書遺言(保管制度を利用する)

公正証書遺言とは

公証役場へ行き公証人の前で遺言書の内容を口授するか、あるいはあらかじめ作成し公証人も確認済みの遺言書を公証人が読み上げて間違いがないかを確認する方法で作成する遺言書です。

原本は公証役場で保管され偽造・変造の心配はなく、紛失・滅失の心配もありません。

マイナス面は、公正証書遺言を作成するためには証人が2人必要で、
証人2人と公証人に遺言書の内容を知られてしまうという点と費用がかかります。

《メリット》

  • 自身で書く必要がないため、書くことができない人でも作成可能
  • 偽造・変造・滅失・紛失の心配がない
  • 形式上の不備の心配がない

《デメリット》

  • 費用がかかる(公証手数料:5,000円~249,000円財産価額による)

参照:日本公証人連合会Q7.公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか? | 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)

  • 公証人・証人に遺言書の内容を知られる

自筆証書遺言とは

遺言書の全文と日付(例:令和6年9月吉日は不可)を自書し署名(ペンネームや雅号・芸名可)・押印が必要です。
財産目録についてはパソコンやワープロでの作成でも可能です。ただしすべてのページに押印が必要となります。

自筆証書遺言の場合、見つけてもらいにくくなるうえ偽造・変造・破棄の恐れもあるため
令和2年7月10日より開始された法務局による遺言書保管制度を利用することをおすすめします。

この保管制度を利用せず自筆証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所による検認の手続きが必要です。
この手続きには2か月程度かかるため相続手続きの開始が遅れることとなり、相続税の支払い期限に間に合わなくなる可能性も生じます。

《メリット》

  • 気軽に書くことができる
  • 費用がほとんどかからない(保管制度:1通につき3,900円)

参照:法務省http://09 手数料 | 自筆証書遺言書保管制度 (moj.go.jp)

《デメリット》

  • 保管制度を利用しない場合、偽造・変造・破棄の可能性がある
  • 見つけてもらいにくい
  • 形式上の不備により無効になる可能性
  • 保管制度を利用しない場合、家庭裁判所による検認が必要
  • 本人が自分で法務局へ出向かなければならない

【遺言書を作成するときの留意点】

遺言書を作成時の留意点はいくつかあります。

遺留分に注意すること

遺留分を侵害するような遺産分割の配分であってもその遺言書は有効です。
しかし遺言書は相続人全員の同意があればその内容とは違う遺産分割協議も出来てしまいます。
せっかく考えて作成した遺言書ですので自身の思いを汲んでもらいたいでしょうから、
偏った遺産の渡し方や初めから遺留分を侵害するような内容である場合には、
遺言書に付言事項を添えるなどして思いを伝えましょう。
遺言書を作成した時にあらかじめ内容を相続人へ伝えておくことも重要です。

遺留分相当額に充てる原資を準備しておくことも必要です。
保険等を活用して準備しておきましょう。

  • 遺留分を侵害していないか確認する
  • 遺留分を侵害する場合、あらかじめ遺留分相当額を準備する
  • 遺言書の内容を相続人へ話しておく

遺言書の有効性を疑われないように注意すること

高齢者の場合日ごろから接している人が認知症を疑うような状態だったにも関わらず遺言書を作成した場合、
無効を主張されることも考えられます。
また、自筆証書遺言の場合本人が本人の意思で書いたと確実に判断できるように
遺言書を書いているときの記録(動画等)を残しておくことも有効です。

署名がペンネームや芸名でも有効とされていますが、
後々の争いに発展させないためにも自身の名前でしっかりと署名したほうが無難だと思います。

  • 長谷川式認知症スケール等を活用する
  • 遺言書を書いているときの動画を保存しておく
  • 署名は自身の名前のほうが無難

【まとめ】

せっかく遺言書を残しても無効を主張され、争いになることは決して望むことではないと思います。
準備をして思いを形にするために形式を守り確実に届けることが重要だと思います。

リスクを抑え円満に笑顔で相続を進められるよう、専門家としてお手伝いできれば幸いです。
きしだ行政書士事務所では遺言書作成サポートを行っております。

ぜひお気軽にご相談ください。

ご相談はこちらからお願いいたします。

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