【生前対策のススメ】生前対策に有効な遺言書の書き方
現在、日本は65歳以上の高齢者が総人口の約29.1%を占めており『超高齢化社会』となっています。
そこで問題となるのが認知症です。
2050年には日本の65歳以上の高齢者の内7人に一人の割合で認知症になると予想されています。
認知症になると、物事を判断する能力が衰え財産を管理できなくなるため『銀行口座の凍結』『資産の売買』などができなくなります。
生活全般への影響が非常に大きくなります。
【財産を守るための認知症対策】
認知症対策として挙げられるのは
- 法定後見制度
- 任意後見制度
- 家族信託
- 遺言書作成
《法定後見制度》
この制度は物事の判断能力が不十分な方や判断能力がない人の主に財産の守るための制度です。
本人の判断能力に応じて「後見」「補佐」「補助」の3つの種類があります。
家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所において後見開始の審判を経て成年後見人を選任します。
この成年後見人に専門家が就任すれば毎月報酬が発生します。月20,000円~60,000円とされています。
申し立てに係る費用(裁判所)→https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/kokensite/hiyou/index.html
成年後見人等の報酬の目安(裁判所)→https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/file/130131seinenkoukennintounohoshugakunomeyasu.pdf
《任意後見制度》
本人に判断能力があり元気なうちにあらかじめ財産管理について公正証書で契約しておく制度です。
後見監督人の選任により後見開始となります。
状況によっては本人の判断能力の衰えに気づくのが遅れる場合があります。
また親族を後見人に設定しておけば後見人に支払う費用は発生しないものの、後見監督人には専門家が就任するので後見監督人への報酬が発生します。(月10,000円~30,000円)
全国的に見てもこの制度の利用率はまだ低いのが現状です。
後見監督人の報酬の目安(裁判所)→https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/file/130131seinenkoukennintounohoshugakunomeyasu.pdf
《家族信託》
この家族信託という言葉は徐々に知られつつあります。
財産を信頼できる家族に託し管理や運用を任せる制度です。
本人が認知症になったとしても財産が適切に管理されることを目的としています。
この家族信託を利用すれば原則後見は不要となります。
信託契約の内容が複雑になりやすく、専門家がサポートをすることにより費用が高額になりやすい点、
この制度ができたのが平成19年(2007年)と新しい制度であるため判例がほとんどないのがデメリットです。
(朝日デジタルより)
《遺言書作成》
一般に活用されている遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言の2つが挙げられます。
自筆証書遺言は本人が自筆で遺言書の全文、日付および氏名を記載し押印することで作成することができます。
紙とペンがあれば作成が可能で手軽で費用がかかりません。
しかし、遺言書には法律により定められた要件がありその要件を満たさず遺言書が無効となる可能性があります。
自宅で保管するため紛失・改ざんの恐れがあるほか、自筆証書遺言は裁判所での検認手続が必要になるため相続手続きに時間がかかります。
2020年から自筆証書遺言の保管制度が始まりました。この制度を利用することで裁判所による検認手続が不要となりますが、
金融機関によっては自筆証書遺言がある場合でも法定相続人全員の署名と印鑑・住民票などを求める場合がありますので注意が必要です。
理由として自筆証書遺言の法的担保力が挙げられます。
つまりこの自筆証書遺言は法的に有効なのかどうかを金融機関では判断できないわけです。
自筆証書遺言保管制度/自筆証書遺言の書き方(法務省)→https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html
公正証書遺言は公証人が作成する遺言書です。
信頼性が高く、無効になるリスクが少ないのがメリットです。
費用がかかりますが紛失や改ざんの恐れがなく公証人が法的に有効であると保証します。
証人が2人立ち会うことになります。
すでに相続人の中に認知症を発症している人がいるのであれば、遺産分割協議ができなくなるため遺言書作成は必須だと考えられます。
公正証書遺言および自筆証書遺言の文例(法務省)→https://www.moj.go.jp/content/001159606.pdf
【遺言書でできること】
前述のとおり、認知症対策に有効な遺言書ですがそのほかにも
- 遺産分割で争いを避けたい
- 法定相続人以外に財産を残したい
- 相続人がいない
などの場合に活用できます。
遺言書は本人の死後にその効力が発生するため法律により遺言書でできることが定められています。
《法定遺言事項》
- 推定相続人の廃除及びその取り消し
- 相続分の指定及び指定の委託
- 遺産分割方法の指定及び指定の委託、遺産分割の禁止
- 相続人相互の担保責任の指定
- 遺贈
- 一般社団法人設立のための財産の拠出
- 信託の設定
- 保険金の受取人の変更
- 認知
- 未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定
- 遺言執行者の指定及び指定の委託
- 著作物の実名登録の申請をなすべき者の指定
これらを理解して作成する必要があります。
また、せっかく遺言書を作成しても記入漏れや不備により後々争いに発展するケースも考えられますので注意が必要です。
【遺言書作成のポイント】
- 財産や人物は明確に特定できるように記載をする。
- 財産の抜け漏れに注意する。
- 法的な効力を検討して文言を選ぶ。
- 複数のケースを想定して、条件等をつけて 遺言条項に盛り込む。
財産は具体的に特定できるようにしましょう。(例:○○銀行▲支店・口座番号)
不動産の場合は登記簿上の記載です。(住所ではありません)
私道の記載漏れ・マンションの共用部分の記載漏れ等も要注意です。
自筆証書遺言に添付する財産目録については、通帳のコピー等でも可となっているので積極的に活用しましょう。
ただし自筆によらない目録については毎葉に署名・印を押さなければならないとされています。(民法968条)
財産を明確にしたうえで、その各財産の帰属先を指定しましょう。
(例:A不動産は長男〇〇へ、B不動産は次男▲▲へ相続させる等)
この指定がないと遺産分割協議を必要としてしまいます。
《相続人ではない人へ財産を残す場合》
例えば不動産を事実婚の相手に残したいとすれば、必ず遺言書が必要になります。
その際に、遺言執行者を指定しましょう。
遺言執行者を指定していない場合、法定相続人全員と共同で当該不動産の登記をすることになります。
法定相続人が協力的な場合は問題ないかもしれません。
しかし、非協力的な場合は手続きに時間がかかってしましますし精神的負担もとても大きいものとなるでしょう。
また遺留分への配慮が必要です。
上記の例でいえば遺留分相当額の代償金を準備しておかなければいけません。
【遺言書を準備するタイミング】
現在の日本の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳(2023年)です。
健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳(2019年)です。
少なくともこの健康寿命までには生前対策を終えておくことを視野に入れて準備を進めましょう。
【まとめ】
高齢者の生前対策は、健康寿命を視野に入れ早い段階から準備が必要です。
正しい知識を活かし、健康なうちにご本人の意思を生前対策に反映させるならば
専門家の関与が必要でしょう。
当事務所においてもご相談を受け付けております。
お気軽にご相談ください。