【おひとりさまの生前対策】健康寿命までにやっておきたいこと
神戸市で生前対策から死後事務までをサポートしております「きしだ行政書士事務所」の情報室です。
今回はおひとりさまの生前対策についてまとめてみました。
日本におけるひとり暮らしの件数(単独世帯)は、近年増加傾向にあります。
特に高齢者のひとり暮らしが顕著に増えています。
例えば平成22年(2010年)には479万1千人だった65歳以上の単独世帯数が令和2年(2020年)には562万6千人に増加しました。
また、全世帯に占めるひとり暮らしの割合も増加しており2019年の調査では全世帯の約28.8%がひとり暮らしでした。
この傾向は今後も続くと予測されます。
令和4年版高齢社会白書(内閣府)より
また、日本における認知症の有病率は特に高齢者の増加に伴い今後も増加すると予測されます。
022年の調査によると65歳以上の高齢者の約12.3%が認知症を患っており、軽度認知障害(MCI)の有病率は約15.5%でした。
将来的には2040年までに認知症を患う高齢者の数は約584万人に達すると推計されています。
また、認知症と軽度認知障害(MCI)を合わせた有病率は約28%に達する見込みです。
「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」 (研究代表者 九州大学 二宮利治)」より
このような現状からも生前に、健康で判断能力のあるうちに認知症対策・亡くなった後のことについて何らかの対策をしておかなければなりません。
023年の日本の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳(2019年)です。
生前対策は少なくともこの健康寿命までには終わらせておくことをお勧めします。
【健康寿命までに終わらせておきたい生前対策】
- 身の回りの整理
- 財産の整理
- デジタルデータの整理
- エンディングノートの作成(40歳代から50歳代)
- 遺言書の作成
毎年のように平均寿命は延び、日本は長寿の国です。しかし、便利に移動でき健康だからこそいろんな場所へ出向く機会も多いことから、いつ何が起こっても不思議ではありません。また日本は災害大国です。
今年も年初から地震があり、夏には豪雨災害があちこちで起こる国となっています。
(1)身の回りの整理
私自身も多くの物に囲まれて生活しているのでそろそろミニマムな生活にあこがれているもののなかなか手が付けられていませんが、よく聞く「断捨離」はとても有効な手段です。
不要なものの処分し必要なもののみ残すように日ごろから心掛けたいものです。
今では高齢者向けの買い取り業者も出ています。高価なブランド物だけではなく日用品を回収してくれる場所も増えていますので是非活用してみてください。
(2)財産の整理
例えば取引のある金融機関の数がとても多いと相続手続に非常に時間がかかります。
銀行であれば2~3行までに整理してください。
(3)デジタルデータの整理
今は高齢者でもスマホを持つのは当たり前で、お店に行っても紙の会員カードは廃止されほとんどアプリで取引します。
そのような場合はID/パスワードの管理が必要です。
亡くなった後に解約手続きが必要なもの(いわゆるサブスク)については必ずわかるようにしておきましょう。
気づかない間にお金を引き落とされていることも多々あります。
ただし残す場所には注意が必要です。
安全面を考慮しつつ準備を進めましょう。
(4)エンディングノートの作成
エンディングノートという名前から想像するのは高齢者向けの物であるというイメージですが、実はエンディングノートを作成する適齢は40代後半から50代といわれています。
エンディングノートには遺言書のような法的な効力はありません。
葬儀の方法や医療に関する希望等を書き残すことで万が一の時に家族同士が悩んでもめたりしないように、家族への配慮として残しておきましょう。
(3)のデジタルデータについても記入することもできます。
(5)遺言書の作成
遺言書とはご自身が亡くなった後に法的な効力が発生するものです。
なんでも書くことができますが、法的な効力を持つ項目は法律で決められています。
遺言書には種類と決められた形式があり、そのほかにも注意するべき点がありますので、せっかく費用や時間をかけて用意していても発見されなかったり、形式上の不備により無効とされたりしないように、費用は掛かっても専門家に相談されることをお勧めします。
知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)
【遺言書を作成した時の遺言書の執行について】
遺言書を作成することについては法務局のホームページや多くの士業の方のホームページなどでも見ることができますが、では遺言書を書いて残した後、ご自身がなくなった後にどのように執行されるかご存じですか?
まず遺言執行者とはどのような役割と権限があるのでしょうか?
《遺言執行者》
遺言執行者とは文字通り、「遺言」を「執行」する人です。
- 遺言者は遺言で、1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる(民法1006条)
- 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない(民法1009条)
- 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。(民法1010条)
- 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。(民法1015条)
遺言において遺言を執行してくれる人を指定することができます。専門家でなくても構いません。
ご自身の信頼できる人を遺言執行者に指定できます。
その遺言執行者は成人で破産者ではない人であればだれでも構いません。
遺言執行者は直接に相続人に対し効力を発揮できるので強い権限を持ちます。(ただし遺言書に書かれた通りのことについて)
- 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
- 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
- 第644条、第645条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。
(民法第1012条)
遺言執行者は遺言書を確認し(自筆証書遺言は家庭裁判所において検認が必要です)戸籍を取り寄せ相続人を確定させ、就任または辞退の通知と遺言内容を相続人全員へ送ります。
《遺言執行者が必ず必要なケース》
- 遺言によって廃除やその取り消しを行う場合
- 遺言によって認知をする場合
《遺言執行者がいたほうがスムーズなケース》
- 遺言によって遺産を贈与(遺贈)する場合や寄付する場合
- 遺産分割方法の指定とその委託をする場合
- 祭祀継承者を指定する場合
遺言執行者は遺言に書かれた内容の通りのことしかできません。中立・公平に遺言を執行します。
【その他の注意点】
遺言書を残し遺言執行者を指定していれば、中立・公平な立場で遺言内容を執行してくれるのですが、その他に注意しておきたい点があります。
《ゆうちょ銀行の口座がある場合》
ゆうちょ銀行に口座がある場合、その払い戻し先にはゆうちょ銀行の口座しか指定できません。
相続人の口座がない場合は新規の口座開設をした後にその口座へ入金になります。
口座を持ちたくない、あるいは新規に口座開設手続きをしている時間がないなどの理由がある場合、あらかじめゆうちょ銀行の口座は解約し別の銀行口座と1本化するなどの対策が必要です。
《JAバンク口座のある場合》
JAバンクに口座がある場合の払戻手続については、その口座のある支店窓口まで実際に行かなければ手続できません。
遠方にある場合は遺言執行者に日当や交通費を余分に支払うことになりますので、ゆうちょ銀行の場合と同じく別銀行と1本化するなどの対策が必要です。
《有価証券がある場合》
該当する証券会社に相続人の口座がなければ名義書換ができません。
あらかじめ相続人が口座開設をすることをお勧めします。
証券会社における口座開設には時間がかかりますのでその分相続手続も時間がかかることになります。
価格が変動する商品ですので時間がかかってしまうと損をしてしまう場合があるので注意が必要です。
【おひとり様の生前対策】
おひとり様の定義は様々ありますが、高齢夫婦の内一方がなくなった場合、同居の家族がいない場合も含まれますし、そもそも未婚のおひとり様も該当します。
毎日連絡を取り合う関係の人がいればよいのですがなかなかそうもいきません。
おひとりさまの生前対策として以下が挙げられます。
- 見守り契約
- 委任契約(財産管理委任契約)
- 任意後見契約
- 公正証書遺言+遺言執行者
- 死後事務委任契約
見守り契約ではご自身の状態に合わせて、例えば毎日lineのスタンプだけを朝送ることから、週1回お伺いの電話をかけて話す、訪問してもらって様子を見てもらうなどを希望に沿った形で契約することができます。
財産管理委任契約では、まだ判断能力があるが身体が病気等で衰えた際に、
自分で銀行にいくなどの行為を第三者に任せる契約です。判断能力がなくなると任意後見契約に移行し、お金の管理や療養看護・身上監護を してもらえます。
また、任意後見人は死亡届を出すことも可能です。
公正証書遺言に遺言執行者を指定することで、兄弟姉妹には遺留分がないため全財産を誰に遺すかを遺言で決めておくことができます。
それを実行してもらうためには遺言執行者を指名しておく必要があります。
顔を見たこともない甥や姪が相続することを避けたい場合、相続人以外への遺贈は遺言書が必須です。
死後事務委任契約とセットしておくことでより安心していただけると思います。
死後事務委任契約では遺言書ではカバーできない葬儀や納骨、行政の手続き、遺品整理など第三者と契約を結び亡くなった後、手続きをしてもらえる契約です。
葬儀をしたい場合に喪主代行やペットを生前に決めておいた人(団体)へ引き渡しも依頼できます。
【まとめ】
現代は家族関係が複雑かつ希薄になりつつあります。
ひとり暮らしの増加に伴いますます生前に健康なうちに対策を立てて準備することで安心した老後を過ごせるようにしていただきたいと思います。
必要な場合には専門家へ相談することも必要です。
きしだ行政書士事務所では生前対策から死後事務までサポートさせていただいております。
初回ご相談は無料です。
ぜひお気軽にご相談ください。
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