安易な開設はNG?厚労省が示す就労系サービスの厳格な指定基準
神戸三宮のきしだ行政書士事務所です。今回は厳格化される就労系のサービスについて解説します。
「就労支援事業は、誰でも簡単に高収益が得られるビジネスである」——もしそんな言葉を耳にしたことがあるなら、少し立ち止まってください。
厚生労働省は令和7年11月、就労継続支援A型・B型の質の向上と適正な運営を目的とした、極めて重要な「新規指定・運営指導ガイドライン」を発出しました。 近年、一部で見られる不適切な運営や安易な事業開設に対し、自治体の審査・指導の目はかつてないほど厳しくなっています。
これから事業を始めようとする方が、指定申請の土俵際で「こんなはずではなかった」と後悔しないためには、何を知っておくべきか。
法人の代表者自らに課せられる役割や、厳格化された収支計画の審査など、新ガイドラインが示す「事業存続のための鉄則」を分かりやすく解説します。
指定就労継続支援事業所の運営に係る主な関係告示・通知等
障害福祉サービス事業は国からの給付金で運営されます。税金をつかうわけですから当然に事業者は以下の基準を遵守しなければなりません。
- 指定基準(人員・設備・運営): 厚生労働省令第171号に基づく基本ルール 。
- 留意事項通知: 移行・A型・B型の運営における具体的な留意点 。
- 会計処理・ガイドライン: 「就労支援事業会計」に基づき、福祉事業と生産活動の会計を明確に区分すること 。
参照001006157.pdf就労支援事業の会計ガイドライン
しかし、最近はニュースにもなるほど、不正に国からの給付金を受け取り行政処分や指定取消処分を受ける事業所が後を絶ちません。
そこで国が出したのがこのガイドラインです。001620467.pdf厚生労働省
なぜ今、就労系サービスの指定審査が「厳格化」しているのか
「令和7年11月ガイドライン」が突きつけたメッセージ
一部の不適切な運営(工賃の給付費補填や不正に加算の算定を行い給付金を受け取っていた事例など)への厳しい目
「福祉」と「経営」の両立が必須条件に
単なる「居場所」ではなく「働く場所」としての質の追求
審査に落ちる事業所の共通点——「安易な開設」と見なされる3つの赤信号
① コンサルタント・代理人任せの申請
代表者や管理者が内容を把握していないと判断された瞬間にアウト
最近はよくネット広告において「就労継続支援事業所の運営ノウハウを提供」や「他の事業所と同じように運営しておけば大丈夫」のような謳い文句を見かけます。
私がよく取り扱う指定権者ではコンサルタントの事業計画書だとわかれば(見ればすぐわかります)受付をしない方針のようです。
② 他事業所の計画書の「コピペ」
地域の特性や具体的な支援内容がない「空薄な計画」は通らない
これも、同様に他の事業所と同じ運営であれば大丈夫だとして出した計画書だとすぐにわかります。
③ 実態のない「高賃金・高工賃」の確約
具体的な受注先や収益根拠がない数字は「利用者誘因」と疑われる
利用者が集まれば事業所の収入はアップしますので、とりあえず利用者を集めておけば運営は成り立つという考えでありもしない高額な工賃(数字)にならないようにしっかりと指定権者は見ています。
「通る」指定申請のために——代表者が必ず自ら行うべき3つの準備
鉄則1:法人の代表者・管理者が「直接」面談に臨む
自治体は「誰が責任を持って運営するのか」を厳しくチェックする
面談では行政書士の同席は認められるが発言は認められない場合もあります。
また書類は管理者の経歴も提出が必須ですので書類上で疑義を挙げられる場合もあります。
鉄則2:地域ニーズの徹底的なリサーチと市区町村への事前相談
「なぜこの場所に、このサービスが必要か」を議事録に残すレベルで協議する
初めて事業所を興したいという人からすると、ハードルが上がります。リサーチ相手としては「特別支援学校」「相談支援事業所」「就労選択支援事業所」「連携したい就労移行事業所」などが挙げられると思います。
鉄則3:就労支援事業会計の深い理解
給付費(公費)と生産活動(売上)の「財布」を分ける知識は必須
こちらは就労支援事業所の会計に関するガイドラインがありますので、少なくとも読んで理解しておく必要があると思います。
審査の肝は安定収益の根拠をどう示すか
「適切な生産活動」と認められる境界線
eスポーツ、水やり、麻雀教室の手伝い…それらは本当に「能力向上」に繋がるか?
先日のニュースでは大阪において全就労継続支援B型事業所のアンケート調査結果が発表されていました。特に在宅支援において「eスポーツ」「メダカの飼育」などが支援内容として挙げられていましたが、これらの支援内容についてどう感じますか?
一般就労につながる能力の向上のための支援と言えるかどうか?というところは考えものではないかと思います。生産活動から得られる能力をそんな市場で活かせられるのか?も問われます。
受注先(取引先)の確保と具体的な積算根拠
単一の取引先だけでなく、複数のルートや継続性のある契約見込みを示す
関係先企業からの受注による生産活動をされている事業所も多くあります。 継続的に工賃を支払うことができるのかはしっかりと把握したいと思うところでしょう。
「自立支援給付費からの補填」を疑われない予算編成
各指定権者からは集団指導の資料が公表されています。どの年度においても「自立支援給付費からの補填」はしてはいけないということは繰り返し指導内容に含まれています。
指定は「ゴール」ではなく「スタート」——開所後6ヶ月の試練
新規指定から6ヶ月を目途に行われる「運営指導」
計画通りに生産活動が行われているか、即座にチェックが入る
指定後6か月を目途に運営指導が入るとしたら当然に指定申請時に提出した書類に沿った運営がなされているかを確認されることでしょう。
もし違った場合は「なぜ」「どのような経緯でそうなったのか」を管理者や法人代表者自ら説明できる確固たる理由があるべきだと思います。
人員配置の継続性
指定時だけ配置された「名義貸し」の専門職は、後の指定取消リスクに
特にサービス管理責任者が指定後すぐに別の人に変更になっている場合は要注意です。
【まとめ】プロ意識こそが「指定」への最短距離
厳しい基準は、真剣に障害者支援に取り組む事業所を守るためのもの。
運営基準、新ガイドラインやその他の通達等を熟読し、自治体の信頼を勝ち取る「誠実な経営」を目指しましょう
ここまでお伝えした通り、就労継続支援事業の新規指定は、かつてないほど「本気度」と「専門知識」が問われる時代となりました。自治体が求めているのは、単なる書類の体裁ではなく、利用者の人生を預かるに足る「実効性のある事業計画」です 。
ガイドラインの厳格化は、真摯に障害福祉へ取り組もうとする皆様にとっては、決して高い壁ではありません。むしろ、適正な運営を行うことで地域から信頼され、長く愛される事業所を作るための「道標」でもあります 。
しかし、膨大な関係告示の把握や、生産活動と給付費を厳格に切り分ける会計知識、さらには自治体との細かな事前協議を、経営の準備と並行して一人で行うのは容易ではありません 。
「自分の事業計画で審査は通るだろうか?」「生産活動の収益根拠をどう説明すればいいのか?」と少しでも不安を感じられたら、ぜひ一度当事務所へご相談ください。
ご相談は無料です。予約制となっておりますのでこちらよりお問合せください。
最後までお読みいただきありがとうございました。

